この記事のポイント
- まず結論:熱性けいれんは 6か月〜5歳の約8% が経験
- 3原則:動画撮影・5分計測・横向きで寝かせる
- 「口に物を入れない・押さえつけない」が鉄則
- 対象:6か月〜5歳のお子さんを持つ保護者向け
⚠️ 本記事の取り扱い
熱性けいれんは 多くは良性 ですが、5分以上続く・繰り返す ものは緊急。口に物を入れない・押さえつけない を必ず守ってください。
発作時の対応(まずこれ)
| 対応 | 内容 |
|---|---|
| ① 時計を見る・動画を撮る | 開始時刻を確認、スマホで撮影(受診時の重要情報) |
| ② 横向きに寝かせる | 嘔吐物の誤嚥予防、平らな場所で |
| ③ 危険物を遠ざける | 周りの硬い物・尖った物 |
| ④ 衣服を緩める | 首回り・お腹周り |
| ⑤ 5分以上続けば119 | 救急要請、緊急 |
| ⑥ 単発でも初発なら受診 | 鑑別のため |
受診のタイミング
| 状況 | 対応 |
|---|---|
| すぐ救急(119) | 5分以上続くけいれん/繰り返す(24時間以内に複数回)/意識回復が遅い(けいれん後10分以上)/左右非対称のけいれん/呼吸困難・チアノーゼ |
| すぐ受診(小児科・救急外来) | 初発の熱性けいれん/既往あっても発作の様子が普段と違う/6か月未満・5歳以上のけいれん |
| 電話相談 | 単発で短く回復した既往ありの2回目以降 |
熱性けいれんとは
日本小児神経学会 熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023 より:
基本
- 6か月〜5歳の小児に発熱(38度以上)に伴うけいれん
- 約8%の子が経験(5歳までに)
- 小児科で最も多い発作性疾患
- 家族集積性あり:両親・きょうだいに既往
- 多くは予後良好
「熱性けいれん」と「熱性発作」
- 以前は「熱性けいれん」
- 2023年ガイドラインから「熱性発作」も併記
- 国際的には「febrile seizure(FS)」
- 一般には「熱性けいれん」がまだ広く使われる
発症の仕組み
- 乳幼児期の脳の未熟さ
- 急激な体温上昇 が引き金
- 遺伝的素因
- 発熱の原因は風邪・突発性発疹等の感染症がほとんど
単純型 vs 複雑型
日本小児神経学会 ガイドライン2023 より、最も重要な区別:
単純型(多数)
- 全身性のけいれん(左右対称)
- 5分以内に治まる
- 24時間以内に1回のみ
- 意識の回復が早い
- 予後良好:てんかん移行率も低い
複雑型(少数だが要評価)
- 部分性のけいれん(左右非対称)
- 5分以上続く
- 24時間以内に複数回
- 意識回復が遅い
- てんかん移行率↑:脳波等の精密検査
→ 動画撮影が鑑別の重要情報
「3原則」発作時の対応
① 動画撮影・時刻記録
- スマホで動画を撮る
- 開始時刻を確認
- 手足の動き・左右差 を記録
- 医師の鑑別に最重要
② 5分を計測
- 時計・スマホで秒単位で
- 5分以上で救急(119)
- 「あと数秒待とう」と無駄に時間を失わない
③ 横向きに寝かせる
- 嘔吐物の誤嚥予防
- 平らな場所:床・畳
- 頭の下に柔らかい物:タオル
- 回復体位(リカバリーポジション)
NG な対応
| NG対応 | 理由 |
|---|---|
| 口に物を入れる(割り箸・スプーン等) | 窒息・歯損傷・指噛みリスク。「舌を噛まないため」は誤り |
| 押さえつける | 骨折・脱臼リスク、効果なし |
| 大声で名前を呼ぶ・揺さぶる | 意味なし、ご家族のパニック |
| 水を飲ませる | 誤嚥リスク |
| 「目を覚まさせよう」と強く刺激 | 効果なし |
けいれん後
発作が終わったら
- 意識回復を待つ:通常 数分以内
- 横向きのまま様子見
- 呼吸を確認
- すぐ受診:初発・既往あっても普段と違う
受診時の情報
- 発作の動画
- 発作の時刻・持続時間
- 発熱の有無・体温
- 発作前の様子・症状
- 既往歴
検査・治療
検査
- 問診・診察:基本
- 血液検査:発熱原因
- 髄液検査:髄膜炎の疑い
- 脳波:複雑型・繰り返す例
- 頭部画像:複雑型
治療
急性期
- 発熱の原因治療
- 抗けいれん薬(5分以上続く場合):ジアゼパム坐薬・点滴
予防
- ダイアップ坐薬(ジアゼパム):再発予防
- 発熱時に投与:医師判断で
- 「全員に予防が必要」ではない
- ガイドラインで適応を明示
予防投与の適応
日本小児神経学会 ガイドライン2023 より、以下のいずれか:
- 複雑型熱性けいれんの既往
- 15分以上の発作の既往
- 1歳未満での発症
- てんかん家族歴
- 3回以上の再発
→ 当てはまる場合は 発熱時に予防投与。
てんかんとの違い
日本小児神経学会 より:
| 項目 | 熱性けいれん | てんかん |
|---|---|---|
| 発熱との関連 | 発熱に伴って起こる | 発熱なくても起こる |
| 年齢 | 6か月〜5歳が中心 | 全年齢 |
| 頻度 | 多くは年数回以下 | 反復・無誘発 |
| 予後 | 多くは良好、5歳までに終わる | 慢性疾患 |
| 治療 | 多くは経過観察、必要時予防投与 | 抗てんかん薬の常用 |
てんかん移行率
- 単純型熱性けいれん:約2〜3%(一般集団に比べやや高い)
- 複雑型:約5〜10%
- てんかん家族歴あり:高い
ワクチンとの関連
国立感染症研究所 予防接種スケジュール と日本小児神経学会の見解:
ワクチンによる発熱と熱性けいれん
- MR・水痘ワクチン後 に発熱が起こりうる
- 接種から1〜2週間後の発熱で稀に熱性けいれん
- ワクチンを避ける積極的理由にはならない:感染症の方がリスク↑
予防投与
- 過去に熱性けいれんあり で接種する場合は事前相談
- 必要なら接種時に予防投与
- 接種を諦めない
「単純型」の親へのメッセージ
多くは良性
- 約8%が経験:珍しくない
- 多くは5歳までに終わる
- 知的発達への影響はない(単純型)
- てんかん移行は少数
発作を見た親の心理
- 「死ぬかも」と本気で思う
- PTSD様の反応 も
- 保健センター・小児科で相談
- 「次もありうる」備え を
備え
- ダイアップ坐薬の処方:適応があれば
- 発作時対応のメモ
- 動画撮影の準備
- 救急連絡先
やってはいけないこと
| やってはいけないこと | 理由 |
|---|---|
| 口に物を入れる | 窒息・歯損傷・指噛みリスク |
| 押さえつける | 骨折・脱臼 |
| 発作中に水を飲ませる | 誤嚥 |
| 時間計測をしない | 5分判断ができない |
| 動画撮影をしない | 医師の鑑別情報を失う |
| 「家族歴あるからワクチンしない」 | 感染症リスクの方が大きい |
| 複雑型なのに「単純型」と自己判断 | 精密検査の機会を逃す |
| 解熱剤で熱だけ下げて受診せず | 原因疾患の見逃し |
よくある誤解
Q. けいれん中、舌を噛まないため口に物?
A. 絶対NG。窒息リスク、舌を噛むことはほぼない。
Q. ワクチンで熱性けいれんが起こる?
A. 稀にあるが、感染症リスクの方が大きい。接種を諦めない。
Q. 熱性けいれん = てんかん?
A. 違う。多くは5歳までに終わる、てんかん移行は少数。
Q. 解熱剤で予防できる?
A. 熱性けいれんの予防効果は限定的。標準は対症療法と必要時の抗けいれん薬。
Q. 何回も繰り返すと頭が悪くなる?
A. 単純型では知的発達への影響なし。安心して。
Q. 何科を受診すれば?
A. 小児科、緊急は 救急外来・119、頻発・複雑型は 小児神経科。
この記事の根拠
- 日本小児神経学会 熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023
- 日本小児神経学会 一般向け情報
- 日本小児科学会 子どもがかかりやすい病気
- 国立感染症研究所 予防接種スケジュール
まとめ
- 熱性けいれんは 6か月〜5歳の約8% が経験、小児科で最多の発作性疾患
- 3原則:動画撮影・5分計測・横向きで寝かせる
- 「口に物を入れない・押さえつけない」が鉄則
- 単純型 vs 複雑型 を見分ける(左右対称・5分以内・24時間1回が単純型)
- 5分以上・繰り返す・左右非対称 は救急
- 適応があれば ダイアップ(ジアゼパム)坐薬 で予防
- 単純型は 知的発達への影響なく予後良好
大切なお知らせ:本記事は公的機関・学会のガイドラインをもとに012.kids編集部が独自にまとめた一般情報です。診断・治療は必ず小児科・小児神経科の医師にご相談ください。

