この記事のポイント
- まず結論:マイコプラズマ肺炎は 4歳以降の「歩く肺炎」
- 特徴:長引く乾いた咳・中等度の発熱・比較的元気
- マクロライド耐性菌(MRMP)が増加
- 対象:4〜15歳のお子さんを持つ保護者向け
⚠️ 本記事の取り扱い
マイコプラズマ肺炎は 稀に重症化 することがあります。呼吸困難・激しい咳・脱水 は迷わず受診を。
受診の目安
日本小児科学会は保護者向けに「長引く発熱・咳などの症状がみられた際はかかりつけ医を受診しましょう」と呼びかけており、「何日続いたら受診」という日数の線引きはしていません(マイコプラズマ肺炎流行に対する注意喚起)。下の表の日数は、判断の材料として 012.kids 編集部が置いた目安です。
| 状況 | 対応 |
|---|---|
| すぐ受診・迷ったら救急(119) | 呼吸が苦しい・息が荒い/唇や顔色が紫っぽい(チアノーゼ)/ぐったり・意識がぼんやり/水分が摂れない・半日以上尿が出ない/3か月未満の発熱 |
| 早めに受診(編集部の目安:数日以内) | 発熱が3日以上続く/咳が1週間以上続く・夜眠れないほど/流行期に家族・園・学校で感染者がいて咳が出てきた |
| 治療開始後の再受診 | マクロライド系抗菌薬を飲み始めて48〜72時間たっても解熱しない(耐性菌の可能性・「マクロライド耐性(MRMP)」の節で詳述) |
| 家庭ケアで様子見 | 解熱していて全身状態がよく、咳だけが徐々に軽くなっている/食事・水分が取れる |
夜間・休日で判断に迷うときは #8000(こども医療電話相談)に電話できます。緊急時は 119。最終的な判断は医療機関の指示に従ってください。
マイコプラズマ肺炎とは
基本
- マイコプラズマ・ニューモニエ(細菌の仲間):細胞壁を持たない
- 「異型肺炎」:通常の細菌性肺炎と症状が異なる
- 学童期に多い(国立健康危機管理研究機構 は「幼児から若年層にかけての発生が中心」としています)
- 3〜7年程度の間隔で大きな流行(日本小児科学会 注意喚起)。オリンピック年に大流行と言われた時代も
- 2024年は大流行年
感染経路
- 飛沫感染:咳・くしゃみ
- 接触感染:手・物
- 家族内・学校・園で広がる
- 潜伏期2〜3週間 と長め
「歩く肺炎」と呼ばれる理由
- 発熱・全身症状が比較的軽い
- 元気で活動できる ことが多い
- でも胸部レントゲンでは肺炎の所見
- 「自宅で寝ない」「学校に行ける」状態でも肺炎
症状
国立健康危機管理研究機構 より:
典型的な経過
| 経過 | 症状 |
|---|---|
| 潜伏期 | 2〜3週間 |
| 初期 | 発熱・倦怠感・頭痛 |
| 初発症状から3〜5日ごろ | 乾いた咳が始まる |
| 1〜2週目 | 咳がピーク・夜悪化 |
| 解熱後 | 咳だけが続く(3〜4週間) |
「咳が長引く」が手がかり
- 解熱後も乾いた咳が3〜4週間続く(国立健康危機管理研究機構)
- 夜間に悪化
- 「治ったかな」と思ってもまた咳
- 「咳が止まらない」が受診のきっかけ
他の症状
- 頭痛・倦怠感
- 発熱:38度以上だが極端な高熱は少ない
- 喘鳴:時に
- 皮膚症状:稀に発疹・蕁麻疹
- 稀な合併症:髄膜炎・心筋炎・関節炎・Stevens-Johnson 症候群
「歩く肺炎」と他の肺炎の違い
下の表は、見分けの手がかりとして 012.kids 編集部が一般的な特徴を整理 したものです(特定の資料の記載を引き写したものではありません)。実際の鑑別は診察・検査によります。
| 項目 | マイコプラズマ | 細菌性肺炎 | ウイルス性肺炎 |
|---|---|---|---|
| 年齢 | 4歳以降 | 全年齢 | 乳幼児多い |
| 発熱 | 中等度 | 高熱 | 中等度 |
| 咳 | 乾いた・長引く | 湿った | 様々 |
| 全身状態 | 比較的元気 | ぐったり | 様々 |
| 抗菌薬 | マクロライド | ペニシリン系 | 無効 |
診断
検査
- 問診・診察:聴診で「ラ音」
- 胸部レントゲン:間質性肺炎像
- 血液検査:CRP・白血球
- マイコプラズマ抗原・抗体検査
- PCR検査:確定診断
- LAMP法:迅速検査
「臨床診断」も多い
- 長引く咳+年齢+胸部所見 で診断
- 流行期はより確信を持って
- 検査結果を待たずに治療開始 することも
治療
厚生労働省 AMR対策 も参考に:
マクロライド系(第一選択)
- 治療指針 が示す投与期間は アジスロマイシン3日間・クラリスロマイシン10日間・エリスロマイシン14日間
- ただし 実際の日数は医師の指示が優先(体重・経過・薬剤で変わります)
- マイコプラズマには細胞壁がないためペニシリンは無効
マクロライド耐性(MRMP)
- 2000年代から急増:日本では一時 80% 超
- アジア地域で特に多い
- 解熱しない・改善しない 場合に疑う
- 第二選択:テトラサイクリン系(8歳未満には原則禁忌)
- 第三選択:ニューキノロン系(適応年齢に注意)
「48〜72時間で解熱」が目安
日本マイコプラズマ学会 肺炎マイコプラズマ肺炎に対する治療指針 および 日本小児科学会 小児のマイコプラズマ肺炎の診断と治療に関する考え方(2025年3月29日改訂)より:
- マクロライド系薬の効果は投与後48〜72時間の解熱で概ね評価できる
- 効く株では投与後48時間で大多数(80%以上)が解熱するが、耐性株では大多数(約70%)が解熱しない
- そのため 48時間経過しても解熱しない場合は薬剤の変更を推奨 している
- 医師の経過観察必須。「もう少し様子を見る」で数日待たない
解熱剤・咳止め
- アセトアミノフェン:第一選択
- アスピリン禁忌:ライ症候群
- 咳止め:本人の症状に応じて医師判断
家庭でのケア
水分・栄養
- 十分な水分
- 消化のいい食事
- 無理に食べさせない
咳への対応
- 加湿:50〜60%
- 蜂蜜:1歳以上の咳に有効(WHO推奨)
- 頭を少し高くして寝かせる
- 温かい飲み物:刺激を和らげる
観察
- 発熱の経過:飲み始めて48〜72時間たっても解熱しなければ再受診
- 呼吸数・呼吸様式
- 食欲・元気
学校保健安全法
日本学校保健会 より:
出席停止
- 「その他の感染症」:明確な日数指定なし
- 「症状が安定し全身状態が良好」 で登校可
- 解熱と全身状態が大事
- 多くの園・学校で独自基準
「咳が長引くから登校できない」?
- 咳のみで全身状態良好なら登校可 が多い
- マスクの徹底
- 学校・園と相談
家族内感染対策
患者ケア
- マスク(年齢で)
- 手洗い
- タオル・食器分け
家族の症状監視
- 2〜3週間の潜伏期
- 咳が始まったら検査
- 家族で順次発症する ことが多い
きょうだいへの感染
- 共用物を分ける
- 咳エチケット
- 手洗いの徹底
重症化のサイン
国立健康危機管理研究機構 より、稀ながら:
重症肺炎
- 呼吸困難・チアノーゼ
- SpO2低下
- 激しい咳で会話困難
- 酸素投与・入院
肺外合併症
- 髄膜炎・脳炎
- 心筋炎
- 関節炎
- 皮膚症状:Stevens-Johnson 症候群
- 溶血性貧血
→ 全身症状の悪化は再受診
やってはいけないこと
| やってはいけないこと | 理由 |
|---|---|
| マクロライドを飲んで48〜72時間たっても解熱せず放置 | 耐性菌の可能性。指針は48時間で解熱しなければ薬剤変更を推奨している |
| ペニシリン系を要求 | マイコプラズマには無効 |
| 「歩く肺炎だから」と無理な活動 | 悪化リスク |
| アスピリン投与 | ライ症候群 |
| 抗菌薬を症状軽快で中断 | 再燃・AMR |
| 「咳だけ」と放置 | 肺炎の見逃し・家族感染 |
| マスクなしで登校 | 集団感染 |
| 3か月未満の発熱を様子見 | 重症化 |
よくある誤解
Q. 「歩く肺炎」だから軽い?
A. 比較的元気でも肺炎は肺炎。長引く咳に注意。
Q. マクロライドは何日飲む?
A. 治療指針 では アジスロマイシン3日間・クラリスロマイシン10日間・エリスロマイシン14日間。実際の日数は医師の指示通りに飲み切ってください。
Q. ペニシリン系は効く?
A. 無効。マイコプラズマには細胞壁がない。
Q. 何回もかかる?
A. 再感染あり、免疫は長続きしない。
Q. ワクチンは?
A. マイコプラズマのワクチンはない(研究段階)。
Q. 何科を受診すれば?
A. 小児科、重症は 救急外来・119。
この記事の根拠
- 国立健康危機管理研究機構 マイコプラズマ肺炎とは
- 国立健康危機管理研究機構 マイコプラズマ肺炎(詳細版)
- 国立健康危機管理研究機構 感染症発生動向調査(IDWR)
- 日本小児科学会 小児のマイコプラズマ肺炎の診断と治療に関する考え方(2025年3月29日改訂)
- 日本マイコプラズマ学会 肺炎マイコプラズマ肺炎に対する治療指針
- 日本小児科学会 マイコプラズマ肺炎流行に対する注意喚起(2024年10月27日)
- 厚生労働省 AMR(薬剤耐性)対策アクションプラン
- 日本学校保健会 学校において予防すべき感染症の解説
まとめ
- マイコプラズマ肺炎は 4歳以降の「歩く肺炎」
- 特徴:長引く乾いた咳・中等度の発熱・比較的元気
- マクロライド系が第一選択、飲み始めて48〜72時間たっても解熱しなければ耐性菌を疑い再受診
- MRMP(マクロライド耐性)の増加、テトラサイクリン・ニューキノロンも視野
- 3〜7年程度の間隔で大きな流行、2024年は大流行年
- 登校:症状軽快・全身状態良好で
- 稀に 肺外合併症(髄膜炎・心筋炎・SJS)
大切なお知らせ:本記事は公的機関・学会の発信情報をもとに012.kids編集部が独自にまとめた一般情報です。診断・治療は必ず小児科の医師にご相談ください。

