この記事のポイント
- まず結論:クループは 6か月〜3歳に多いウイルス性上気道炎
- 3徴:犬吠様咳・嗄声(声がれ)・吸気性喘鳴
- 秋〜春の夜中に急激に悪化 することが多い
- 対象:6か月〜5歳のお子さんを持つ保護者向け
⚠️ 本記事の取り扱い
急性喉頭蓋炎との鑑別 が重要。よだれを垂らす・体を前傾は緊急。クループの呼吸困難も急速に進行することがあります。
受診のタイミング
| 状況 | 対応 |
|---|---|
| すぐ救急(119) | 吸気性喘鳴が安静時にも/陥没呼吸/チアノーゼ/よだれを垂らす(急性喉頭蓋炎疑い)/意識がぼんやり/「呼吸できない」と訴える |
| すぐ受診(小児科・救急外来) | 犬吠様咳+嗄声+吸気性喘鳴/呼吸が苦しそう/哺乳力低下/3か月未満の症状/夜間悪化 |
| 早めに受診 | 軽い嗄声・咳が続く/微熱を伴う |
クループとは
日本小児科学会 や 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 より:
基本
- 「クループ症候群」「急性喉頭炎」「仮性クループ」
- 上気道(喉頭・声門下)の炎症・浮腫
- 6か月〜3歳に多い、ピークは1〜2歳
- 男児にやや多い
- 秋〜春に多い:10〜4月
- 夜間に悪化 することが特徴
主な原因ウイルス
| ウイルス | 特徴 |
|---|---|
| パラインフルエンザウイルス | 最多 |
| RSウイルス | |
| インフルエンザウイルス | |
| アデノウイルス | |
| ライノウイルス | |
| コロナウイルス | 一部 |
病態
- 声門下の浮腫:気道狭窄
- 小さな腫れでも子どもの気道は細いので大きく影響
- 吸う時に陰圧で狭くなる → 吸気性喘鳴
- 咳の振動で犬の遠吠え様の音
3徴
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 より:
犬吠様咳(けんばいようがい)
- 「ケンケン」「コンコン」:犬の遠吠え様
- 乾いた金属音
- アシカの鳴き声に例えられることも
- 特徴的で聞けば分かる
嗄声(させい・声がれ)
- 「ガラガラ声」
- 泣き声も嗄れている
- 完全に出ないこともある
吸気性喘鳴(stridor)
- 吸う時に「ヒューヒュー」「ゼーゼー」
- 気道狭窄のサイン
- 泣くと悪化 することが
- 安静時の吸気性喘鳴は重症サイン
他の症状
- 発熱:多くは微熱〜38度
- 鼻水・咳:先行することも
- 不機嫌・哺乳力低下
- 「夜中に突然」発症することが多い
重症度の評価
日本小児科学会 より、Westley クループスコアなどを参考に:
| 重症度 | 症状 |
|---|---|
| 軽症 | 嗄声・犬吠様咳・喘鳴は啼泣時のみ |
| 中等症 | 安静時にも吸気性喘鳴、軽い陥没呼吸 |
| 重症 | 陥没呼吸・呼吸困難・チアノーゼ・意識低下 |
→ 安静時の吸気性喘鳴・陥没呼吸 で救急受診
急性喉頭蓋炎との鑑別
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 より、最重要の鑑別:
急性喉頭蓋炎
- Hib(インフルエンザ菌b型) が主因
- 2〜7歳に多い(クループより少し年長)
- Hibワクチン定期接種化で激減、ただしゼロではない
- 数時間で気道閉塞・致死的:緊急
クループ vs 急性喉頭蓋炎
| 項目 | クループ | 急性喉頭蓋炎 |
|---|---|---|
| 病原体 | ウイルス | 細菌(Hib) |
| 年齢 | 6か月〜3歳 | 2〜7歳 |
| 進行 | 数日 | 数時間で重症化 |
| 発熱 | 微熱〜38度 | 39度以上の高熱 |
| 咳 | 犬吠様 | 少ない |
| 嗄声 | あり | 少ない(くぐもった声) |
| よだれ | なし | あり(嚥下困難) |
| 姿勢 | 自由 | 前傾・首を伸ばす(気道確保) |
| 治療 | ステロイド | 緊急気道確保・抗菌薬 |
急性喉頭蓋炎を疑うサイン
- よだれを垂らす:嚥下困難
- 体を前傾:首を伸ばして「三点支持位」
- 「呼吸できない」と訴える
- 高熱を伴う
- 激しい喉痛
- 声がくぐもる
→ すぐ救急(119)、口腔内を覗き込まない(気道閉塞悪化)
家庭での対応
落ち着かせる
- 泣くと悪化する:抱っこ・優しい声かけ
- 本人を安心させる
- 無理に診察しない
冷気を吸わせる
- 窓を開けて外の冷気 を吸わせる
- 冷蔵庫を開けて立つ
- 冷たい飲み物:刺激を和らげる
- 昔は「湯気・加湿」が推奨されたが、エビデンスは弱い:現在は冷気の方が有効との報告
姿勢
- 抱っこ:縦抱きが楽
- 上半身を高くする
- 横にならせない:呼吸が苦しい時
観察
- 喘鳴・陥没呼吸・顔色
- 動画撮影:受診時の重要情報
- 悪化サインに注意
治療
日本小児科学会 より:
ステロイド(中等症以上)
- デキサメタゾン:単回投与で多くは改善
- 内服・点滴・筋注
- 国際的にも標準治療
- 吸入ステロイド(ブデソニド)も
アドレナリン吸入(重症)
- 救急外来で
- 気道浮腫を急速に改善
- 数時間効果
抗菌薬
- 基本不要:ウイルス感染
- 細菌の混合感染 が疑われる場合のみ
入院
- 重症例・呼吸困難
- 3か月未満
- 基礎疾患
「夜中に急変」のメカニズム
- 副交感神経優位:夜は気道分泌物↑
- 横になる姿勢で悪化
- 乾燥した寝室
- 昼間は症状が軽くても夜悪化
→ 「昼間ましだから安心」は危険、夜の悪化に備える
反復するクループ
- 「反復性クループ」:何度も繰り返す
- アレルギー素因との関連 が示唆
- 気管支喘息に移行することも
- 小児アレルギー科で評価
学校保健安全法
日本学校保健会 より:
- 「その他の感染症」:出席停止対象外
- 症状が良くなり全身状態が良好 なら登園可
- 園・学校の規定 を確認
やってはいけないこと
| やってはいけないこと | 理由 |
|---|---|
| 泣かせる・興奮させる | 喘鳴・呼吸困難↑ |
| 口腔内を覗き込む(急性喉頭蓋炎疑い時) | 気道閉塞悪化 |
| 「夜は仕方ない」と救急受診せず | 重症化リスク |
| 横に寝かせる(呼吸困難時) | 呼吸悪化 |
| 市販の咳止め | 効かない、乳児に推奨されない |
| 「よだれ・前傾」を「クループ」と決めつけ | 急性喉頭蓋炎の見逃し |
| 3か月未満の症状を様子見 | 重症化 |
| 抗菌薬を要求 | ウイルスには無効 |
よくある誤解
Q. クループは「子どもの定番」だから様子見?
A. 重症化することもある、特に夜中の悪化に注意。
Q. 加湿器・湯気が一番?
A. エビデンスは弱い、冷気の方が有効との報告も。
Q. ステロイドは怖い?
A. 単回投与で安全性高い、気道浮腫を改善。
Q. 急性喉頭蓋炎は Hib ワクチンで予防できる?
A. 大幅に減少、ただし完全には消えていない。よだれ・前傾は緊急サイン。
Q. 何科を受診すれば?
A. 小児科・救急外来、夜間休日は 救急。
Q. 兄弟にうつる?
A. ウイルス感染なのでうつる、ただし兄弟は軽い風邪症状で済むことも。
この記事の根拠
- 日本小児科学会 子どもがかかりやすい感染症
- 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 急性喉頭炎・クループ
- 国立感染症研究所 感染症発生動向調査
- 日本学校保健会 学校において予防すべき感染症の解説
まとめ
- クループは 6か月〜3歳に多いウイルス性上気道炎、秋〜春に多発
- 3徴:犬吠様咳・嗄声・吸気性喘鳴
- 夜中に急激に悪化 することが多い
- 冷気を吸わせる・落ち着かせる:家庭での初期対応
- ステロイド単回投与 が中等症以上の標準治療
- 急性喉頭蓋炎(よだれ・前傾・高熱)との鑑別が重要、緊急
- 反復例はアレルギー素因 を評価
大切なお知らせ:本記事は公的機関・学会の発信情報をもとに012.kids編集部が独自にまとめた一般情報です。診断・治療は必ず小児科・耳鼻咽喉科の医師にご相談ください。

