この記事のポイント
- まず結論:マイコプラズマ肺炎は 学童期(5〜12歳)に多い 呼吸器感染症。頑固な乾いた咳が3〜4週間続く のが特徴。マクロライド系抗菌薬(クラリスロマイシン等)が第一選択
- 重要:抗菌薬開始から 3〜5日 経っても発熱が下がらないときは 耐性菌の可能性 → 再受診で別系統の薬へ
- 登校:法定の出席停止はなし、全身状態が良ければ登校可
- 対象:3〜12歳のお子さんを持つ保護者向け
すぐ受診・数日以内に相談・家庭ケアで様子見
| 状況 | 対応 |
|---|---|
| すぐ救急・受診 | 呼吸が苦しい・息が荒い/唇が紫(チアノーゼ)/意識がぼんやり/ぐったり/高熱が5日以上続いて元気消失/脱水(半日以上尿が出ない) |
| 小児科を受診 | 発熱+咳が1週間以上続く/乾いた咳が頑固で夜眠れない/家族・園・学校でマイコプラズマが流行/抗菌薬を3〜5日飲んでも熱が下がらない(耐性疑い、再受診) |
| 家庭ケアで様子見 | 治療中で熱は下がり、咳のみ徐々に軽快している/本人は元気で食事・水分は取れる |
夜間・休日で判断に迷うときは #8000 に電話できます。
マイコプラズマ肺炎とは
マイコプラズマ肺炎は 肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)という細菌類似の微生物による感染症です(国立感染症研究所)。
「歩く肺炎」と呼ばれる理由
- レントゲンで 肺炎の影 が出ていても、本人は比較的元気
- 発熱はあるが、ウイルス性肺炎ほど呼吸困難にならないことが多い
- でも 咳は頑固で3〜4週間続く
- 学童〜若年成人に多い
典型的な経過
| 時期 | 症状 |
|---|---|
| 発症初期(1〜3日) | 発熱(38〜39℃)・倦怠感・頭痛 |
| 4〜7日目 | 乾いた咳が出始め、徐々にひどくなる |
| 1〜2週目 | 咳がピーク。夜間に咳き込んで眠れない/吐くほど |
| 3〜4週目 | 発熱は治まるが咳だけ続く |
| 回復 | 咳も徐々に軽快(合計4週間程度) |
流行年齢
- 学童期(5〜12歳)に最も多い
- 保育園・幼稚園の集団生活でも発生
- 4〜5年周期で大流行することがある(オリンピックイヤーと呼ばれた時期も)
- 2024年以降、世界的に流行
感染経路
- 飛沫感染(咳・くしゃみ)
- 接触感染
- 潜伏期は 2〜3週間 と長い
- 家庭内・学校内で広がりやすい
治療:マクロライド系が第一選択
主な抗菌薬
| 系統 | 主な薬剤 | 役割 |
|---|---|---|
| マクロライド系 | クラリスロマイシン、アジスロマイシン | 第一選択(小児で安全) |
| テトラサイクリン系 | ミノマイシン、ドキシサイクリン | 耐性疑い時、8歳以上で使われやすい |
| ニューキノロン系 | トスフロキサシン | 耐性疑い時の選択肢 |
マクロライド耐性について
国立感染症研究所 の報告によれば、
- 2012年頃 は国内分離株の 80〜90%がマクロライド耐性
- 2016年以降の AMR アクションプラン等で抗菌薬適正使用が進み、
- 2019〜2020年は20〜30% に低下
- ただし依然として一定割合は耐性菌
そのため:
- 抗菌薬開始から3〜5日経っても発熱が下がらない ときは 再受診
- 自己判断で薬を中止しない
- 医師の判断でテトラサイクリン系・ニューキノロン系に変更することがある
家庭でできること
服薬の徹底
- 抗菌薬は指示された日数を飲み切る(症状が良くなっても続ける)
- アジスロマイシンは 3日間 が多い(薬の特性で長く効く)
- クラリスロマイシンは 5〜7日間 程度
咳への対処
- 加湿:湿度50〜60%
- 温かい水分:のどを潤すと咳が和らぐ(白湯・はちみつ入りお茶 ※1歳未満ははちみつNG)
- 上半身を高くして寝る:仰向けより咳き込みにくい
- 咳止め:医師の指示通り。子どもの咳は気道を守る反射なので、強い咳止めは慎重に
- 市販の風邪薬で自己判断しない:成分が重複したり、子どもに不適切なものがある
発熱への対処
- アセトアミノフェン(カロナール等)を医師の指示通りに
- 38.5℃以上+本人がつらそうな時に使う
- アスピリンは使わない(小児)
水分・食事
- 水分こまめに:脱水を防ぐ
- 食欲がなければ無理しない、薄味のおかゆ・うどん・ゼリーなどで
- 咳が止まらず吐いてしまったら、少量ずつ何回かに分けて
家族の感染対策
- 飛沫感染するので マスク・手洗い・換気
- タオル・コップを分ける
- 兄弟に 咳・発熱 が出たら早めに受診
- 親や祖父母も感染し得る
やってはいけないこと
| やってはいけないこと | 理由 |
|---|---|
| 抗菌薬を3〜5日飲んで熱が下がらないのに「もう少し様子見」 | 耐性菌の可能性。早めに再受診し抗菌薬を変更すべき |
| 症状が改善したからと抗菌薬を自己中断 | 再発・耐性化のリスク |
| 「咳がつらいだろう」と強い市販の咳止めを連用 | 咳は気道を守る反射。安易に止めない |
| 市販の総合感冒薬を子ども用にあわせて自己治療 | マクロライド系が必要なので市販薬では治らない |
| 長引く咳に「気管支炎が悪化した」と別の抗生剤を要求 | 自己判断で増やさない。再受診で適切な判断を |
| 登校・登園を「咳が残っているから」と過剰に休ませる | 全身状態が良ければ登校可。むしろ運動制限はストレスに |
| 抗菌薬を「念のため」と兄弟に予防的に飲ませる | 耐性菌の原因。検査と処方を受ける |
受診の詳しい目安
小児科を受診
- 発熱+咳が 1週間以上 続いている
- 乾いた咳が頑固で夜眠れない/吐くほど
- 家族・園・学校でマイコプラズマが流行
- 抗菌薬を 3〜5日飲んでも熱が下がらない(耐性疑い、再受診)
- レントゲンで肺炎を指摘されたあとの経過観察
すぐ救急 / 夜間休日相談
- 呼吸が苦しい・息が荒い
- 唇が紫(チアノーゼ)
- 意識がぼんやり・ぐったり
- 高熱(40℃以上)が続いて元気消失
- 半日以上尿が出ない・水分が取れない
夜間・休日は #8000 に相談できます。
登校・登園の判断
- 学校保健安全法上の出席停止期間は定められていない(第3種「その他の感染症」の扱いになることはある)
- 一般的な目安:発熱が下がり、全身状態が良ければ登園・登校可
- 咳だけ残っていても、本人が元気なら登校可 が原則
- 園・学校によって「医師の許可書」を求められることがある
よくある誤解
Q. 熱は下がったのに咳だけ3週間続いています。治っていない?
A. マイコプラズマ肺炎の特徴的な経過 です。咳が3〜4週間続くのは珍しくありません。発熱が下がり全身状態が良ければ、咳だけ残るのは回復過程です。
Q. 咳止めを強く出してもらえば早く治る?
A. 咳は 気道を守る反射 で、安易に強く止めると痰が出にくくなり経過が悪化することも。医師の指示の範囲で。
Q. 抗菌薬を飲んでも効かないので別の病院に行きたい
A. 同じ医師に再受診 を推奨します。3〜5日効果がない=耐性の可能性として、テトラサイクリン系・ニューキノロン系に変更する判断ができます。新しい病院では経過がわからず治療がやり直しになる可能性。
Q. 何度もかかります。
A. マイコプラズマには 免疫がつきにくい ため、何度もかかります。流行期は対策を。
Q. 大人もかかる?
A. かかります。子どもよりも症状が長引く傾向。家庭内で大人にうつることも。
Q. 検査はどのようにしますか?
A. のどの拭い液で 迅速検査(15〜30分)が可能。確定診断には LAMP法・PCR検査・抗体検査 などを使います。レントゲンで肺炎の所見を確認することも。
Q. 何科を受診すれば?
A. 小児科。長引く咳ならまず小児科で評価を。レントゲン・血液検査が必要なら同院で対応します。
この記事の根拠
- 国立感染症研究所 マイコプラズマ肺炎の発生状況
- 厚生労働省 保育所における感染症対策ガイドライン
- 学校保健安全法施行規則 第十九条(第3種「その他の感染症」)
- 日本小児科学会
- 日本小児呼吸器学会 マクロライド耐性肺炎マイコプラズマに関する報告
まとめ
- マイコプラズマ肺炎は 学童期(5〜12歳)に多い 呼吸器感染症。乾いた咳が 3〜4週間 続く
- マクロライド系抗菌薬(クラリスロマイシン・アジスロマイシン)が第一選択
- 3〜5日経っても発熱が下がらないときは耐性菌の可能性 → 再受診で薬を変更
- 「歩く肺炎」と呼ばれるが、呼吸困難・チアノーゼ が出たら救急へ
- 法定の出席停止はなし、全身状態が良ければ 咳が残っていても登校可
大切なお知らせ:本記事は公的機関・学会の発信情報をもとに012.kids編集部が独自にまとめた一般情報です。医療行為の指示ではありません。お子さまの個別の症状については、必ずかかりつけ医や小児科の医師にご相談ください。

