この記事のポイント
- まず結論:マイコプラズマ肺炎は 学童期に多い 呼吸器感染症。頑固な乾いた咳が解熱後も3〜4週間続く のが特徴。マクロライド系抗菌薬(クラリスロマイシン等)が第一選択
- 重要:抗菌薬開始から 48〜72時間 経っても解熱しないときは 耐性菌の可能性 → 再受診で別系統の薬へ
- 登校:法定の出席停止はなし、全身状態が良ければ登校可
- 対象:3〜12歳のお子さんを持つ保護者向け
受診の目安
日本小児科学会は保護者向けに「長引く発熱・咳などの症状がみられた際はかかりつけ医を受診しましょう」と呼びかけており、「何日続いたら受診」という日数の線引きはしていません(マイコプラズマ肺炎流行に対する注意喚起)。下の表の日数は、判断の材料として 012.kids 編集部が置いた目安です。
| 状況 | 対応 |
|---|---|
| すぐ受診・迷ったら救急(119) | 呼吸が苦しい・息が荒い/唇や顔色が紫っぽい(チアノーゼ)/ぐったり・意識がぼんやり/水分が摂れない・半日以上尿が出ない/3か月未満の発熱 |
| 早めに受診(編集部の目安:数日以内) | 発熱が3日以上続く/咳が1週間以上続く・夜眠れないほど/流行期に家族・園・学校で感染者がいて咳が出てきた |
| 治療開始後の再受診 | マクロライド系抗菌薬を飲み始めて48〜72時間たっても解熱しない(耐性菌の可能性・「マクロライド耐性について」の節で詳述) |
| 家庭ケアで様子見 | 解熱していて全身状態がよく、咳だけが徐々に軽くなっている/食事・水分が取れる |
夜間・休日で判断に迷うときは #8000(こども医療電話相談)に電話できます。緊急時は 119。最終的な判断は医療機関の指示に従ってください。
マイコプラズマ肺炎とは
マイコプラズマ肺炎は 肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)という細菌類似の微生物による感染症です(国立健康危機管理研究機構)。
「歩く肺炎」と呼ばれる理由
- レントゲンで 肺炎の影 が出ていても、本人は比較的元気
- 発熱はあるが、ウイルス性肺炎ほど呼吸困難にならないことが多い
- でも 咳は頑固で3〜4週間続く
- 学童〜若年成人に多い
典型的な経過
国立健康危機管理研究機構 によれば、発熱・倦怠感・頭痛に続いて咳が現れ、咳は初発症状が出てから3〜5日後に始まることが多く、当初は乾いた咳で、経過に従って徐々に強くなり、解熱後も長く続きます(3〜4週間)。
| 時期 | 症状 |
|---|---|
| 発症初期(1〜3日) | 発熱・倦怠感・頭痛 |
| 3〜5日目ごろ | 乾いた咳が出始め、徐々にひどくなる |
| 1〜2週目 | 咳がピーク。夜間に咳き込んで眠れない/吐くほど |
| 解熱後 | 発熱は治まるが咳だけ続く(3〜4週間) |
流行年齢
- 学童期に多い(幼児から若年層が中心)
- 保育園・幼稚園の集団生活でも発生
- 日本小児科学会によれば 3〜7年程度の間隔 で大きな流行が起きることが報告されている(注意喚起)
- 2024年以降、世界的に流行
感染経路
- 飛沫感染(咳・くしゃみ)
- 接触感染
- 潜伏期は 2〜3週間 と長い
- 家庭内・学校内で広がりやすい
治療:マクロライド系が第一選択
主な抗菌薬
| 系統 | 主な薬剤 | 役割 |
|---|---|---|
| マクロライド系 | クラリスロマイシン、アジスロマイシン | 第一選択(小児で安全) |
| テトラサイクリン系 | ミノマイシン、ドキシサイクリン | 耐性疑い時、8歳以上で使われやすい |
| ニューキノロン系 | トスフロキサシン | 耐性疑い時の選択肢 |
マクロライド耐性について
国立健康危機管理研究機構 の報告によれば、
- 2012年頃 は国内分離株の 80〜90%がマクロライド耐性
- 2016年以降の AMR アクションプラン等で抗菌薬適正使用が進み、
- 2019〜2020年は20〜30%(国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト(IASR))に低下
- ただし依然として一定割合は耐性菌
効果を判定するタイミングは「48〜72時間」
日本マイコプラズマ学会 肺炎マイコプラズマ肺炎に対する治療指針 および 日本小児科学会 小児のマイコプラズマ肺炎の診断と治療に関する考え方(2025年3月29日改訂)では、マクロライド系抗菌薬の効果は投与後48〜72時間の解熱で概ね評価できる とされています。
- マクロライドが効く株では、投与後48時間で大多数(80%以上)が解熱する
- 耐性株では大多数(約70%)が解熱しない
- そのため 48時間経過しても解熱しない場合は薬剤の変更を推奨 している
そのため:
- 抗菌薬を飲み始めて48〜72時間たっても解熱しない ときは 再受診(「もう少し様子を見る」で数日待たない)
- 自己判断で薬を中止しない
- 医師の判断でテトラサイクリン系・ニューキノロン系(トスフロキサシン等)に変更することがある。テトラサイクリン系は8歳未満には原則禁忌
家庭でできること
服薬の徹底
- 抗菌薬は指示された日数を飲み切る(症状が良くなっても続ける)
- 治療指針 が示す投与期間は アジスロマイシン3日間・クラリスロマイシン10日間・エリスロマイシン14日間
- ただし 実際の日数は医師の指示が優先 です(体重・経過・薬剤で変わります)
咳への対処
- 加湿:湿度50〜60%
- 温かい水分:のどを潤すと咳が和らぐ(白湯・はちみつ入りお茶 ※1歳未満ははちみつNG)
- 上半身を高くして寝る:仰向けより咳き込みにくい
- 咳止め:医師の指示通り。子どもの咳は気道を守る反射なので、強い咳止めは慎重に
- 市販の風邪薬で自己判断しない:成分が重複したり、子どもに不適切なものがある
発熱への対処
- アセトアミノフェン(カロナール等)を医師の指示通りに
- 38.5℃以上+本人がつらそうな時に使う
- アスピリンは使わない(小児)
水分・食事
- 水分こまめに:脱水を防ぐ
- 食欲がなければ無理しない、薄味のおかゆ・うどん・ゼリーなどで
- 咳が止まらず吐いてしまったら、少量ずつ何回かに分けて
家族の感染対策
- 飛沫感染するので マスク・手洗い・換気
- タオル・コップを分ける
- 兄弟に 咳・発熱 が出たら早めに受診
- 親や祖父母も感染し得る
やってはいけないこと
| やってはいけないこと | 理由 |
|---|---|
| 抗菌薬を飲んで48〜72時間たっても熱が下がらないのに「もう少し様子見」 | 耐性菌の可能性。指針は48時間で解熱しなければ薬剤変更を推奨している |
| 症状が改善したからと抗菌薬を自己中断 | 再発・耐性化のリスク |
| 「咳がつらいだろう」と強い市販の咳止めを連用 | 咳は気道を守る反射。安易に止めない |
| 市販の総合感冒薬を子ども用にあわせて自己治療 | マクロライド系が必要なので市販薬では治らない |
| 長引く咳に「気管支炎が悪化した」と別の抗生剤を要求 | 自己判断で増やさない。再受診で適切な判断を |
| 登校・登園を「咳が残っているから」と過剰に休ませる | 全身状態が良ければ登校可。むしろ運動制限はストレスに |
| 抗菌薬を「念のため」と兄弟に予防的に飲ませる | 耐性菌の原因。検査と処方を受ける |
受診の詳しい目安
小児科を受診
- 発熱が 3日以上 続いている(編集部の目安)
- 咳が 1週間以上 続いている、または乾いた咳が頑固で夜眠れない/吐くほど(編集部の目安)
- 家族・園・学校でマイコプラズマが流行
- 抗菌薬を飲み始めて 48〜72時間たっても解熱しない(耐性疑い、再受診)
- レントゲンで肺炎を指摘されたあとの経過観察
すぐ救急 / 夜間休日相談
- 呼吸が苦しい・息が荒い
- 唇が紫(チアノーゼ)
- 意識がぼんやり・ぐったり
- 高熱(40℃以上)が続いて元気消失
- 半日以上尿が出ない・水分が取れない
夜間・休日は #8000 に相談できます。
登校・登園の判断
- 学校保健安全法上の出席停止期間は定められていない(第3種「その他の感染症」の扱いになることはある)
- 一般的な目安:発熱が下がり、全身状態が良ければ登園・登校可
- 咳だけ残っていても、本人が元気なら登校可 が原則
- 園・学校によって「医師の許可書」を求められることがある
よくある誤解
Q. 熱は下がったのに咳だけ3週間続いています。治っていない?
A. マイコプラズマ肺炎の特徴的な経過 です。咳が3〜4週間続くのは珍しくありません。発熱が下がり全身状態が良ければ、咳だけ残るのは回復過程です。
Q. 咳止めを強く出してもらえば早く治る?
A. 咳は 気道を守る反射 で、安易に強く止めると痰が出にくくなり経過が悪化することも。医師の指示の範囲で。
Q. 抗菌薬を飲んでも効かないので別の病院に行きたい
A. 同じ医師に再受診 を推奨します。48〜72時間で解熱しない=耐性の可能性として、テトラサイクリン系・ニューキノロン系に変更する判断ができます。新しい病院では経過がわからず治療がやり直しになる可能性。
Q. 何度もかかります。
A. マイコプラズマには 免疫がつきにくい ため、何度もかかります。流行期は対策を。
Q. 大人もかかる?
A. かかります。子どもよりも症状が長引く傾向。家庭内で大人にうつることも。
Q. 検査はどのようにしますか?
A. のどの拭い液で 迅速検査(15〜30分)が可能。確定診断には LAMP法・PCR検査・抗体検査 などを使います。レントゲンで肺炎の所見を確認することも。
Q. 何科を受診すれば?
A. 小児科。長引く咳ならまず小児科で評価を。レントゲン・血液検査が必要なら同院で対応します。
この記事の根拠
- 国立健康危機管理研究機構 マイコプラズマ肺炎の発生状況
- こども家庭庁 保育所における感染症対策ガイドライン
- 学校保健安全法施行規則 第十九条(第3種「その他の感染症」)
- 日本小児科学会 小児のマイコプラズマ肺炎の診断と治療に関する考え方(2025年3月29日改訂)
- 日本マイコプラズマ学会 肺炎マイコプラズマ肺炎に対する治療指針
- 日本小児科学会 マイコプラズマ肺炎流行に対する注意喚起(2024年10月27日)
- 国立健康危機管理研究機構 IASR 診療ガイドライン等に基づくマイコプラズマ肺炎治療の現況
- 厚生労働省 こども医療電話相談事業(#8000)について
まとめ
- マイコプラズマ肺炎は 学童期に多い 呼吸器感染症。乾いた咳が解熱後も 3〜4週間 続く
- マクロライド系抗菌薬(クラリスロマイシン・アジスロマイシン)が第一選択
- 48〜72時間たっても解熱しないときは耐性菌の可能性 → 再受診で薬を変更
- 「歩く肺炎」と呼ばれるが、呼吸困難・チアノーゼ が出たら救急へ
- 法定の出席停止はなし、全身状態が良ければ 咳が残っていても登校可
大切なお知らせ:本記事は公的機関・学会の発信情報をもとに012.kids編集部が独自にまとめた一般情報です。医療行為の指示ではありません。お子さまの個別の症状については、必ずかかりつけ医や小児科の医師にご相談ください。

