この記事のポイント
- まず結論:小児喘息は 長期管理薬(吸入ステロイド等)を毎日続ける ことで発作を予防する病気。発作時は気管支拡張薬を吸入 し、20分以内に改善しなければ受診
- 救急対象:横になれない/話せない/唇が紫/意識がぼんやり → 救急車(119)
- 対象:1〜12歳のお子さんを持つ保護者向け
すぐ救急・受診・家庭ケアで様子見
| 状況 | 対応 |
|---|---|
| 救急車(119) | 唇が紫(チアノーゼ)/横になれず座って肩で呼吸/話せない・短く区切ってしか話せない/意識がぼんやり/気管支拡張薬を吸入しても改善しない/呼吸数が極端に多い(乳児60以上、幼児40以上、学童30以上) |
| すぐ受診 | 気管支拡張薬を吸入して改善するが繰り返す/喘鳴(ゼーゼー)が続く/夜間咳で眠れない/風邪をきっかけに息苦しさ/初めての喘鳴・発作と思われる症状 |
| 家庭ケアで様子見 | 長期管理薬を継続し、症状が安定/気管支拡張薬が必要ない/本人は元気で運動も可能 |
夜間・休日で判断に迷うときは #8000 に電話できます。呼吸の異常はためらわず救急 へ。
子どもの喘息とは
小児喘息(小児気管支喘息)は、気道(空気の通り道)の慢性的な炎症 で、ダニ・ハウスダスト・感染症などをきっかけに気道が狭くなり ゼーゼー・呼吸困難 を起こす病気です(日本小児アレルギー学会 ガイドライン2023)。
典型的な症状
- 喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒュー):呼気時にとくに目立つ
- 咳:特に夜間・早朝、運動後、笑った時
- 息苦しさ・胸の苦しさ
- 風邪のたびに長引く咳
- しゃべりかけているときの息切れ
発症と経過
- 多くは 6歳までに発症
- 「乳児喘鳴」(気管支炎・細気管支炎の後の一時的なもの)と区別が必要
- 適切に治療すれば 成長とともに改善 することが多い
- 大人になっても続く例もあり、その場合は継続管理が必要
主な誘因(悪化因子)
- ダニ・ハウスダスト・カビ(通年性)
- ペットの毛・フケ
- タバコの煙(受動喫煙含む)
- 風邪・インフルエンザ等の感染症
- 運動・冷気
- 大気汚染・花粉
- ストレス・笑い・泣き
治療の2本柱:長期管理薬と発作治療薬
① 長期管理薬(毎日・予防)
気道の炎症を抑えることが目的。症状がない時も継続が必要です。
| 薬剤 | 役割 |
|---|---|
| 吸入ステロイド(ICS) | 第一選択。フルティフォーム、パルミコート、キュバール等 |
| 吸入ステロイド + 長時間作用型β2刺激薬(ICS-LABA) | 中等症以上で。アドエア、シムビコート等 |
| 抗ロイコトリエン薬(内服) | モンテルカスト(キプレス・シングレア)等。低年齢でも飲みやすい |
| 吸入抗コリン薬 | 補助的に |
② 発作治療薬(必要時)
気道を広げて発作を鎮める ことが目的。
| 薬剤 | 使用法 |
|---|---|
| 短時間作用型β2刺激薬(SABA) | サルブタモール(ベネトリン・サルタノール)等。発作時に吸入 |
| 経口ステロイド(短期) | 中等度以上の発作で医師処方 |
長期管理薬と発作治療薬は 役割が全く違います。長期管理薬を「発作時に増やす」のは効果がなく、発作治療薬を「予防で毎日使う」のも適切ではありません。
発作のレベル別対応
小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2023 の分類を参考に:
| レベル | 症状 | 対応 |
|---|---|---|
| 小発作 | 軽い喘鳴/話せる/普段通り遊べる程度 | 気管支拡張薬吸入+家庭観察 |
| 中発作 | 喘鳴あり/会話が短く区切れる/少し息苦しそう | 気管支拡張薬吸入→改善しなければ受診 |
| 大発作 | 呼吸困難/横になれない/話せない/脈が速い | すぐ受診(救急) |
| 呼吸不全 | 唇が紫/意識がぼんやり/反応が鈍い | 救急車(119) |
発作時の家庭対応
- 本人を楽な姿勢に:座らせて前傾、または座位で背中を支える(仰向けは苦しい)
- 服を緩める:胸の動きを楽に
- 処方された気管支拡張薬を吸入:用量・回数は医師の指示通り
- 15〜20分待って評価:改善なし or 悪化 → 救急受診
- 水分を少量ずつ:脱水予防
- 時間と症状を記録:受診時に役立つ
家庭でできること
環境整備
- 寝具をダニ対策:シーツ・枕カバー週1回洗濯、布団乾燥
- 掃除機がけ:週2〜3回、特に寝室
- ぬいぐるみ:洗える素材を選ぶ、洗濯
- ペット:寝室に入れない、可能ならば離す
- タバコの煙ゼロ:家族の喫煙は屋外、洋服に付いた煙も注意
- 加湿器:湿度50〜60%でカビ対策
吸入薬の使い方
- 吸入器(スペーサー)を必ず使う:マスク式(乳児・幼児)、マウスピース式(学童)
- 使い方を医師・薬剤師に確認:手技が悪いと薬が肺に届かない
- 使用後はうがい・口を洗う:吸入ステロイドの口腔カンジダ予防
- 学校・保育園には 発作時の緊急対応書 を提出
運動と日常生活
- 運動制限は最小限に:適切に治療すれば運動可能
- 運動誘発喘息があれば 運動前に気管支拡張薬を吸入(医師指示)
- マラソン・水泳 は呼吸機能を高めるので推奨されることも
- 冷気の中の運動は要注意:マスクで呼気を温める
受診と評価
- 定期受診:症状が安定していても1〜3か月ごと
- ピークフローメーター で日々の呼吸機能を測定(5歳以上)
- 風邪をひいたら 早めに受診(発作の前兆)
やってはいけないこと
| やってはいけないこと | 理由 |
|---|---|
| 症状がなくなったから長期管理薬を自己判断で中止 | 気道の炎症が再燃して大発作のリスク |
| 発作時に長期管理薬を増量 | 効果がない。発作治療薬(気管支拡張薬)を使う |
| 気管支拡張薬を「念のため」毎日使う | 効きが悪くなる。発作時のみ使用 |
| 「もう大きくなったから喘息は治った」と通院をやめる | 自己判断ではなく医師と相談して計画的に |
| 吸入手技を確認せずに使い続ける | 薬が肺に届かない。定期的に手技確認 |
| タバコの煙のある環境にいる | 喘息の最大の悪化因子の1つ |
| 発作時に仰向けに寝かせる | 仰向けは呼吸がさらに苦しくなる。座位で前傾を |
| 大発作で気管支拡張薬が効かないのに「もう少し様子見」 | 重篤化リスク。救急車を |
受診の詳しい目安
救急車(119)
- 唇が紫(チアノーゼ)
- 横になれず座って肩で呼吸
- 話せない、短く区切ってしか話せない
- 意識がぼんやり・呼びかけに反応しない
- 気管支拡張薬を吸入しても改善しない
- 呼吸が極端に速い
すぐ受診(救急外来 / 小児科)
- 気管支拡張薬を吸入して改善するが繰り返す
- 喘鳴が長く続く
- 夜間咳で眠れない
- 風邪のたびに息苦しさ
- 初めての喘鳴・喘息様の症状(診断確定のため)
定期受診(小児科 / アレルギー科)
- 症状が安定していても1〜3か月ごと
- 長期管理薬の調整
- 吸入手技の確認
- 環境因子の見直し
よくある誤解
Q. 喘息はそのうち治りますよね?
A. 多くの子は成長とともに改善 しますが、自己判断で薬をやめると悪化することがあります。医師の評価で計画的に減量します。
Q. 吸入ステロイドは怖いです
A. 吸入薬は局所作用が中心で、内服ステロイドより全身への影響がずっと少ない とされます。喘息の長期予後を考えると、適切に使うほうが安全です。
Q. 運動はできない?
A. 適切に治療すれば運動可能。むしろ運動で呼吸機能が高まる例も。運動誘発喘息があれば医師に相談。
Q. 風邪のたびに発作が出ます
A. 感染症は最大の発作誘因の1つ。風邪をひいた早期に受診し、発作予防の薬を増やすことがあります。
Q. ステロイドの吸入のあとうがいは必須?
A. 口腔カンジダの予防に推奨 されています。できない年齢では水を飲ませる・口を拭くで代用。
Q. ピークフローメーターは必要?
A. 5歳以上で 客観的に呼吸機能を把握 したい場合に有用。本人と家族が日々の変化を実感できる。
Q. 何科を受診すれば?
A. 小児科 が第一選択。重症や難治性なら 小児アレルギー科 に紹介されます。
この記事の根拠
- 日本小児アレルギー学会 小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2023
- 日本アレルギー学会・厚生労働省 アレルギーポータル
- 厚生労働省 小児喘息(情報)
- こども家庭庁 こども医療電話相談事業(#8000)
まとめ
- 治療の2本柱:長期管理薬(毎日・予防)+ 発作治療薬(必要時)
- 長期管理薬は 症状がなくても続ける(自己判断中止NG)
- 発作時は 座位前傾+気管支拡張薬吸入、15〜20分で改善しなければ受診
- 唇が紫・話せない・横になれない は救急車(119)
- タバコの煙ゼロ・ダニ対策・吸入手技 が家庭管理の三本柱
大切なお知らせ:本記事は公的機関・学会ガイドラインの発信情報をもとに012.kids編集部が独自にまとめた一般情報です。医療行為の指示ではありません。お子さまの個別の治療計画については、必ずかかりつけ医や小児科・小児アレルギー科の医師にご相談ください。

