この記事のポイント
- まず結論:男児の 約3%(早産児は約30%) に見られる
- 生後6か月までは自然下降を待つ、それまでに下りなければ手術検討
- 1〜2歳までに精巣固定術 が標準
- 対象:男児を持つ保護者向け
受診のタイミング
| 状況 | 対応 |
|---|---|
| すぐ受診(救急外来) | 陰嚢の急な腫れ・激痛(精巣捻転の可能性)/触ると激痛 |
| 早めに受診(小児泌尿器科・小児外科) | 6か月時点で陰嚢内に精巣が触れない/1〜2歳までの手術検討/健診で指摘された |
| 健診で確認 | 1か月・3〜4ヶ月健診で必ずチェック |
| 見守りOK | 移動精巣(陰嚢内に下りる時間がある) |
停留精巣とは
日本小児泌尿器科学会 停留精巣 や 日本小児外科学会 より:
基本
- 陰嚢内に精巣が触れない状態
- 精巣が下降途中で止まっている
- 満期産児で約3%、早産児で約30%
- 生後6か月までは自然下降が期待される
- 6か月以降は自然下降は稀
病態
- 胎児期に精巣はお腹の中で発生
- 下降経路を通って陰嚢内へ
- 生後7か月までに完了が一般的
- 下降が止まると停留精巣
部位による分類
| 部位 | 内容 |
|---|---|
| 腹腔内停留 | お腹の中に精巣 |
| 鼠径部停留 | 足の付け根に精巣 |
| 高位陰嚢停留 | 陰嚢入口に精巣 |
| 滑動性精巣 | 引き出すと陰嚢に下りるが戻る |
「移動精巣」との見分け
日本小児泌尿器科学会 より、重要な区別:
移動精巣(生理的)
- 「陰嚢内に下りている時間がある」
- 暖かい・リラックスしている時に下りる
- 寒い・緊張で上に引っ込む
- 「精巣挙筋反射」が活発な乳児に多い
- 多くは治療不要
停留精巣(病的)
- 「陰嚢内に下りる時間がない」
- 常に陰嚢外
- 手で押しても陰嚢内に保持できない
- 治療が必要
入浴時のチェック
- 温かいお湯につかると下りやすい
- リラックス状態で陰嚢を確認
- 左右両方をチェック
- 健診時に医師に確認
健診での確認
主な確認時期
- 新生児期(出産後の入院中)
- 1か月健診:必ずチェック
- 3〜4ヶ月健診:継続確認
- 6か月時点:手術検討の節目
「自然下降」を待つ期間
- 生後6か月まで
- 6か月以降の自然下降は稀
- 「待ちすぎない」ことも大事
治療
日本小児泌尿器科学会 や 日本小児外科学会 より:
精巣固定術
- 標準術式
- 精巣を陰嚢内に下ろして固定
- 腹腔鏡下手術 が主流
- 入院数日
- 予後良好
手術のタイミング
- 6か月で自然下降なし → 手術検討
- 1〜2歳までに手術が標準
- 「早すぎず・遅すぎず」
- 理由:精巣の温度環境(腹腔は陰嚢より高温)が長期だと精巣機能↓
手術の方法
- 腹腔鏡下精巣固定術:腹腔内停留に
- 鼠径部アプローチ:従来法
- 2段階手術:高位停留で
麻酔・入院
- 全身麻酔
- 入院 1〜数日
- 小児専門麻酔科
放置のリスク
日本小児泌尿器科学会 より:
不妊リスク
- 長期放置で精巣機能低下
- 両側性で不妊リスク↑
- 片側性でも軽度低下 の報告
- 早期治療で温存
精巣がんリスク
- 停留精巣は精巣がんリスク↑:通常の数倍〜数十倍
- 手術しても若干高い:ただし大幅に減る
- 思春期以降の自己触診 で早期発見
精巣捻転
- 停留精巣は捻転リスク↑
- 激痛・嘔吐:救急
- 時間勝負
「左右非対称」も注意
日本小児泌尿器科学会 より:
片側性 vs 両側性
- 片側性:80〜90%
- 両側性:10〜20%
- 両側性は不妊リスク↑
「片方だけ」も治療対象
- 対側の精巣を守る ためにも
- 精巣捻転予防
- 「片方あるから大丈夫」ではない
思春期以降の自己触診
日本小児泌尿器科学会 より:
精巣がんの早期発見
- 思春期以降の月1回程度
- 入浴時にチェック
- しこり・腫れ・大きさの違い
- 両側比較
異常時は
- 泌尿器科
- 早期発見で治療可能
親の心構え
「気づきにくい」疾患
- おむつ替え時に気づかないことも
- 健診で必ず確認 されるが、家庭でも
- 入浴時のチェック が重要
入浴時のチェック方法
- 温かいお湯に浸かる:リラックス
- 両側の陰嚢を観察:左右対称か
- 指で軽く触る:精巣の存在確認
- 「下りていない」「左右違う」が続けば受診
手術への不安
- 小児外科で標準的な手術
- 腹腔鏡で傷も小さい
- 「将来のため」と捉える
- 小児専門麻酔の安全性は高い
鑑別する疾患
鼠径ヘルニア
- 足の付け根の膨らみ
- 「精巣がない」と思っていたら実は」のことも
- 停留精巣と合併 することも
- 詳しくは別記事「子どものヘルニア」
精索水腫
- 陰嚢内の液体貯留
- 透光性あり
- 多くは自然軽快
精巣捻転
- 激痛・嘔吐:緊急
- 数時間で精巣壊死:救急手術
- 停留精巣でリスク↑
やってはいけないこと
| やってはいけないこと | 理由 |
|---|---|
| 健診を「気にしすぎ」と受けない | 早期発見の機会 |
| 「6か月で下りるはず」と1〜2歳超えても待つ | 治療適齢期を逃す |
| 「片側だけだから大丈夫」と放置 | 対側保護・捻転予防のため必要 |
| 入浴時のチェックを怠る | 健診間の変化を見逃す |
| 思春期以降の自己触診を教えない | 精巣がん早期発見の機会 |
| 手術を「怖い」と先延ばし | 不妊・精巣がんリスク |
| 「移動精巣」と「停留精巣」を自己判断 | 専門医評価が必要 |
| 激痛・嘔吐を様子見 | 精巣捻転で精巣壊死 |
よくある誤解
Q. 停留精巣は珍しい?
A. 満期産児で約3%、早産児で約30%。稀ではない。
Q. 自然下降を待っていればいい?
A. 6か月までは待つ、それ以降は自然下降稀。1〜2歳までに手術が標準。
Q. 片側だけなら大丈夫?
A. 対側保護・精巣捻転予防 で治療対象。
Q. 手術で精子作れなくなる?
A. 逆。放置するほど精巣機能↓。早期手術で温存。
Q. 思春期にも気をつける?
A. 自己触診で精巣がん早期発見を教える。
Q. 何科を受診すれば?
A. 小児泌尿器科・小児外科。健診で気づけば紹介。
この記事の根拠
- 日本小児泌尿器科学会 停留精巣
- 日本小児外科学会 小児外科の病気
- 日本小児科学会 子どもがかかりやすい病気
- 厚生労働省 乳幼児健康診査の手引き
まとめ
- 停留精巣は 満期産児約3%・早産児約30%、稀ではない
- 6か月までは自然下降を待つ、それ以降は手術検討
- 1〜2歳までに精巣固定術 が標準
- 放置すると不妊・精巣がん・捻転リスク↑
- 移動精巣(自然下降あり)との見分けが重要
- 入浴時の家庭チェック で異常を見逃さない
- 思春期以降の自己触診 で精巣がん早期発見
大切なお知らせ:本記事は公的機関・学会の発信情報をもとに012.kids編集部が独自にまとめた一般情報です。診断・治療は必ず小児泌尿器科・小児外科の医師にご相談ください。

