この記事のポイント
- まず結論:乳児の発熱で必ず疑う 疾患の一つ
- 腎盂腎炎は腎瘢痕 リスクで将来の腎機能に影響
- 尿検査・尿培養で確定診断
- 対象:0〜12歳のお子さんを持つ保護者向け
⚠️ 本記事の取り扱い
乳児の尿路感染症は 見落とすと腎機能に長期的影響。熱源不明の発熱 は受診を躊躇しないでください。
受診のタイミング
| 状況 | 対応 |
|---|---|
| すぐ救急(119/救急外来) | 高熱+ぐったり/嘔吐を繰り返す/意識がぼんやり/3か月未満の発熱 |
| すぐ受診(小児科) | 発熱で他の症状がない(熱源不明)/哺乳力低下/血尿/背中・脇腹の痛み/排尿時の痛み(年長児) |
| 早めに受診 | 頻尿・残尿感/尿の濁り/反復する微熱/おねしょの増加 |
尿路感染症とは
日本小児腎臓病学会 小児尿路感染症診療ガイドライン や 日本小児科学会 より:
基本
- 尿路(腎臓・尿管・膀胱・尿道)の細菌感染
- 子どもに多い感染症:発熱の原因の上位
- 大腸菌が主(70〜80%):肛門周辺の細菌が尿道から上行
- 女児に多い(尿道が短い)、ただし 1歳未満では男児にも多い
部位別の分類
| 部位 | 名称 | 重症度 |
|---|---|---|
| 腎臓・腎盂 | 腎盂腎炎(上部尿路感染) | 重症:発熱・全身症状 |
| 膀胱 | 膀胱炎(下部尿路感染) | 軽症:頻尿・排尿時痛 |
| 尿道 | 尿道炎 | 軽症 |
「発熱性UTI」 = 腎盂腎炎の可能性
- 38度以上の発熱を伴うUTI は腎盂腎炎の可能性
- 入院・点滴抗菌薬 が必要なことも
- 腎瘢痕リスク
年齢別の症状
日本小児腎臓病学会 より:
新生児・乳児
- 発熱だけが症状のことが多い
- 「熱源不明の発熱」では必ず疑う
- 哺乳力低下
- 嘔吐
- 不機嫌
- 体重増加不良
- 黄疸の遷延(新生児)
→ 「風邪症状がない発熱」は特に疑う。
幼児
- 発熱(38度以上)
- 嘔吐
- 腹痛
- 頻尿
- トイレでの痛みの訴え:「ちんちん痛い」等
- おねしょの再発
学童
- 頻尿・残尿感
- 排尿時痛
- 血尿・尿の濁り
- 背中・脇腹の痛み:腎盂腎炎
- 発熱:腎盂腎炎
「熱源不明の発熱」と UTI
日本小児科学会 より:
「熱源不明の発熱」とは
- 明らかな風邪症状(鼻水・咳・喉痛)がない発熱
- 発疹・下痢・嘔吐などの局所症状がない
- 小児科で「念のため尿検査」と言われることがある
UTIを疑うべき状況
- 3か月未満の発熱:すべて精査対象
- 3〜24か月の38度以上の発熱で他の感染源がない
- 24か月以降でも熱源不明なら検討
「念のため尿検査」を断らない
- 小児科で勧められたら受ける
- 発見できれば治療できる
- 見落とすと腎瘢痕
診断
日本小児腎臓病学会 より:
尿検査
- 試験紙法:白血球・亜硝酸塩
- 顕微鏡検査:白血球・細菌
- 尿沈渣
尿培養(確定診断)
- 菌の種類と感受性を特定
- 採尿方法が重要:清潔な採取
- 乳児はカテーテル採尿・恥骨上穿刺 も
- 結果まで2〜3日
採尿の方法
| 方法 | 対象 |
|---|---|
| 中間尿 | 排尿コントロールできる子 |
| 採尿パック | 乳児(汚染リスクあり) |
| カテーテル採尿 | 確実性が必要な乳児 |
| 恥骨上穿刺 | 新生児で最も確実 |
画像検査
- 腎盂腎炎・反復UTI では必要
- 腎エコー:腎の形・腎盂拡張
- DMSA シンチグラフィー:腎瘢痕の評価
- VCUG(排尿時膀胱尿道造影):VUR の有無
治療
日本小児腎臓病学会 より:
抗菌薬治療
腎盂腎炎(発熱性UTI)
- 入院・点滴抗菌薬 が原則
- 3か月未満は必ず入院
- セフトリアキソン等の広域抗菌薬
- 培養結果でナローダウン
- 総治療期間 10〜14日
膀胱炎
- 外来・内服
- 3〜7日間
治療開始のタイミング
- 疑った時点で抗菌薬開始:腎瘢痕予防
- 培養結果を待たない
- 3か月未満は迅速対応
治療後
- 再診で治療効果確認
- 必要なら画像検査:VUR・腎瘢痕
- 再発予防の方針決定
膀胱尿管逆流(VUR)
国立成育医療研究センター より:
VURとは
- 膀胱の尿が尿管・腎臓に逆流
- 本来は逆流しない構造
- UTI 再発の主要原因
- 腎瘢痕リスク↑
検査
- VCUG:膀胱に造影剤を入れて撮影
- 反復UTI・腎盂腎炎で実施
Grade I〜V
- 軽症(I-II):多くは自然軽快
- 中等症(III-IV):経過観察 or 治療
- 重症(V):手術検討
治療
- 予防的抗菌薬:少量を就寝前
- 手術:内視鏡的注入術・開腹術
- 自然軽快を待つことも
再発予防
日本小児腎臓病学会 より:
生活面
- 十分な水分摂取
- トイレを我慢しない
- 排便後は前から後ろに拭く(女児)
- 排便を整える:便秘もUTI誘因
- 清潔保持
排尿習慣
- 規則的な排尿
- 2〜3時間ごと
- 完全に排尿(残尿を作らない)
再発時の対応
- 「またUTI かも」と早めに受診
- VUR の評価
腎瘢痕とその長期影響
国立成育医療研究センター より:
腎瘢痕
- 腎臓に永久的な傷ができる
- 腎機能の一部低下
- 小児期の腎盂腎炎で発生リスク
長期的影響
- 将来の高血圧
- 慢性腎不全(成人後)
- 妊娠時の合併症:女性
- 「子どもの時のUTIが大人に影響する」
予防
- 早期診断・治療
- 適切な治療期間
- 再発予防
- VUR の評価と管理
鑑別すべき疾患
- 腸腰筋膿瘍:背中の痛み
- 虫垂炎:右下腹部痛
- 腎結石(稀)
- 腫瘍(稀)
→ 発熱+腹痛・背部痛 は小児科で評価。
やってはいけないこと
| やってはいけないこと | 理由 |
|---|---|
| 乳児の発熱を「風邪」と決めつけ | UTI を見逃す |
| 「念のため尿検査」を断る | 早期発見の機会 |
| 抗菌薬を「症状改善」で中断 | 再燃・腎瘢痕 |
| 3か月未満の発熱を様子見 | 必ず受診 |
| 反復UTI で画像検査を断る | VUR を見逃す |
| 女児で「拭き方」を知らない | 再発リスク |
| 便秘を放置 | UTI 誘因 |
| 「子どもの病気だから将来関係ない」 | 腎瘢痕は将来に影響 |
よくある誤解
Q. UTI は大人の病気?
A. 子どもにも多い、特に乳児で発熱の主要原因。
Q. 子どもの UTI は治れば問題なし?
A. 腎瘢痕が残ることがあり将来に影響。早期治療と再発予防が大事。
Q. 「念のため尿検査」は不要?
A. 乳児・熱源不明の発熱では非常に重要。断らない。
Q. 抗菌薬は何日飲む?
A. 腎盂腎炎 10〜14日、膀胱炎 3〜7日。飲み切る。
Q. VUR は手術しないと治らない?
A. 軽症は自然軽快、中等症は経過観察、重症は手術検討。
Q. 何科を受診すれば?
A. 小児科が入口、専門は 小児腎臓内科・小児泌尿器科。
この記事の根拠
- 日本小児腎臓病学会 小児尿路感染症診療ガイドライン
- 日本小児科学会 子どもがかかりやすい感染症
- 国立成育医療研究センター 新生児・乳幼児の腎尿路疾患
- 日本学校保健会 学校において予防すべき感染症の解説
まとめ
- 尿路感染症は 乳児の発熱で必ず疑う 疾患
- 「熱源不明の発熱」では尿検査 を躊躇しない
- 発熱性UTI = 腎盂腎炎の可能性、入院・点滴抗菌薬も
- 抗菌薬は飲み切る:腎盂腎炎10〜14日
- 見落とすと腎瘢痕:将来の高血圧・慢性腎不全リスク
- VUR(膀胱尿管逆流)の評価:反復UTI の場合
- 再発予防:水分・規則的排尿・便秘解消・清潔保持
大切なお知らせ:本記事は公的機関・学会の発信情報をもとに012.kids編集部が独自にまとめた一般情報です。診断・治療は必ず小児科・小児腎臓内科の医師にご相談ください。

